外出禁止令が緩くなって、久しぶりに家の外に出た時、川端康成の小説、「雪国」のフレーズを思い出しました。
「トンネルを抜けると、そこは雪国だった。」
私の場合は、「外出禁止令を抜けると、そこは夏だった。」です。
スペインの緊急事態宣言は、まだ続いていますが、かなり制約は少なくなってきました。
それまでは、不要の外出をすると罰金でした。
家の中にこもっていても楽しくやっていけるものの、やっぱり人間らしく生きる為には、ちょっとは外に出なきゃね、と思い、人の少ない時間を選んで散歩(ジョギングは苦手)をする事にしています。
ここ約2ヶ月間、ほとんど外に出ませんでした。
こもり始めたのが3月上旬。
まだ寒くてロングブースにロングコートだったのに、いつの間にか半袖でないと暑い季節になっていて、びっくりです。
とはいえ、スペインの公衆衛生上の緊急事態宣言が解除されるのはまだ先の話で、少なくても6月末ぐらいになるらしいです。
今度は、「緊急事態宣言を抜けると、そこは20年後の世界だった。」みたいになってるかも…なんて思ったりもします。
ここ20年ぐらいは時の流れは速くはなっていたものの、今回の一連のコロナ禍で、またいっきに20年ぐらい時代が進むんでしょうかね。
とはいえ、いつの時代でも変わらないものもあります。
”人間の本質”みたいなものは、普遍なんじゃないでしょうか?
たとえば、感情や考え方。
もっと具体的に言うと人間の感情や考え方にからむ、人間関係。
そして、今のような、未来がよく見えない時期は、これからも変わらない、とわかっているものを大切にするのもいいのではないでしょうか。
自粛生活で、普段一緒にいなかった家族と24時間一緒にいることになって、人間関係について考えさせられた人もいたかもしれません。
よい人間関係を保つコツは相手を理解しようとする事。
自分がこう考えるから、人も同じように考えると思いがちですが、そんな事はないんです。
まずは、相手は自分と同じように考えたり感じたりするわけではない、と言う事を前提にします。
そして、相手がどんな風に感じて、考えるのかがわかると、イライラさせられる事もぐっと少なくなります。
友人夫婦の微笑ましくて、面白い話があります。
私の友人は、考えるのと同時に行動します。
旦那さんは、じっくりと考えぬいて、納得してから行動をするタイプです。
ある日曜日の朝起きたら、朝早くから友達と遊びに行くと言っていた旦那さんが、タンスの前でジーっと立っていたそうです。
「あれ、まだいるの? 何やっているんだろう」と思ったものの、しばらくの間、だまって様子を見ていました。
でも、まったく動く様子がありません。
銅像のように、ピクリとも動かず、タンスを見ています。
友人は我慢ができなくなって聞いてみました。
「なにやってるの?」
旦那さんは答えます。
「あのカジュアルな靴下、どこにあるかなって思って。」
友人は、イライラしながら言葉を返します。
「あのさ、突っ立ってタンス見てても、出てこないよ。」
私も友人と同じことを言ったと思います。
(泊りに行った事あるから、タンスと旦那さんが、くっきりと目に浮かびます)
だって、手を動かして、目で確認しながら探さないとて、出てくるわけないじゃないですか。
と、思うのは、私達で、旦那さんには旦那さんの考えがあるんです。
旦那さんは、「どこにしまったっけ?」と、一生懸命、記憶を呼び戻していたのです。
「え~と、確かあの靴下を洗ったのは2週間前だよな。
奥さんがしまってくれたんだっけ? いや、あの日は俺がしまったような気がする。
そうだ、曇ってきたから、雨が降る前に洗濯物を取り込んでおこうって、思ったんだ。
奥さんは買い物に行ってて、家にいたのは俺だけだったしな。
だから、俺がしまったわけだ。 う~~ん、なんで、どこにしまったか思い出せないんだ?? え~っと…」と、一見して銅像状態になってる旦那さんも、頭の中は、実はフル回転で、必死に”靴下を見つけて”いたんです。
この旦那さんのように、考える事と行動の境目がない人達というのが一定数存在します。
考えるのも行動のうち。
でも、外から見ていては、それがわかりません。
友人はよく言っていました。
「話をしていても、全然反応がなくてさ。
で、5分ぐらいたってから、返事をするんだよ。
こっちは、もう何を話していたか忘れてるから、急に何言ってるの?って思っちゃうよ。」
でも旦那さんは、反応していないわけではなく、じっと頭の中で、静かに”行動”をしていたのです。
友人にそのことを言うと、妙に納得していました。
「そうか、そういう事だったのか。
それで、パズルのピースがハマった感じ。
私の事、無視してばかりって思っていたけど、そういう訳じゃなかったんだね。」
無反応に見えた旦那さんにしょっちゅうイライラしていて、冗談半分によく「子供がいなかったら離婚だよ。」と言っていましたが、実は無視していたわけではなく、旦那なりに頭の中で一生懸命に”行動”していたんだ、と理解して、イライラが減ったと言いました。
こんな風に、人それぞれ、考え方のパターンがあって、それを理解すると、人間関係はスムーズにいきます。
この考えのパターンというのは、それぞれの人の強みとリンクしています。
というのも強みというのは、それぞれの人の独自の感情や考えや行動のパターンが、良い結果を出す方向に働く能力の事だからです。
人の強みを知る=人の感情や考えや行動のパターンを知る
なのです。
コロナ前だって、中だって、後だって、これは変わらない事。
激動の中、何をやって、何をやめたらいいかわからなくなってしまった時は、どんな時代でも変わらないものを大事にするがペストなんじゃないかな、なんて思っています。
ゴンサレス靖子