私の住んでいるスペインはカトリック教の国。
カトリック教では中絶が禁止されています。
ただスペイン国民全員が教えをすべて守る
真面目なキリスト教徒ばかりではありません。
また近年は無宗教の人々も増えてきています。
そんな事もあって、「中絶法」がどんどん改定されていて、
簡単に中絶ができるようになってきています。
テレビや新聞でそのことが話題になるたびに
16歳の時に知り合って以来、ずっと親友のT子ことが思い浮かびます。
彼女が2人目の子供を妊娠した時の事です。
妊娠中に、子供の染色体の異常があること、
心臓にかなりの異常があって、生まれてからすぐに
手術をしなければならないことがわかりました。
それでも彼女は「生まれてからが大変だよ」、と言いながらも
2人目が出来たことでとても満足している様子でした。
ただ両親に「中絶をしたほうがいい」と
何度も何度も繰り返し言われる事だけが、嫌だと言っていました。
「中絶しなさいって言われたってねえ。
そんな事できるわけないじゃないねえ~」と
さらっと、少しの迷いもなく私に言いました。
気づかないうちに大人になっていたT子に少しびっくりです。
そうこうしているうちに、T子は突然入院してしまいました。
まだ予定日まで何か月もあります。
病院にお見舞いにいった時、
「なんだか、母体もあぶないらしいんだよね」
と言いながらもまったく中絶する気がない彼女に感心しました。
病院ではエレベータのところまで点滴をコロコロさせながら
「じゃあまたね。元気でスペインへ帰ってね」
と送ってくれた姿が目に焼き付いています。
でも、あんなに頑張っていたのに赤ちゃんは死産でした。
しばらくたってからいろいろ彼女が話してくれました。
ある朝、「このままだと母体があぶないから、
今すぐにお産にとりかかります」と言われて、
大急ぎで自然分娩で赤ちゃんを産んだそうです。
でも、その時点で実は赤ちゃんは
お腹のなかですでに死んでしまっていたのです。
ただそれを本人に言うと、精神的に出産をする力が
なくなる恐れがあるので、それを隠して
なんとか自然分娩で赤ちゃんを産んだそうです。
うわ...すごいな...
お腹の中の死んでしまっている赤ちゃんを出産か...
そんな事もあるんだ・・・
私の想像を絶していて、なんと言葉をかえして良いかわかりませんでした。
T子すごいな・・・
学生時代に一緒に騒ぎまくっていたあのT子からは想像できません。
人間の器が一回りも二回りも大きくなったT子に拍手です。
そして、そんな素晴らしい親友を持つ私は幸せものです。
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