今日も、またまたマンションの廊下で長い立ち話をしてしまいました。
スペイン人は話をするのが大好きです。
（と言うと、友人達は「靖子も負けてないよ。」と返してきますが。）
今日は、私の住むマンションのお掃除のお姉さん、パティを交えての長話でした。
パティは南米エクアドル出身。
ちょうど、近所のおばさんと
「スペインは、住むのにすごくいい場所だよね～。」
「日本人駐在員が派遣される、もっとも人気のある国のひとつなんだよ～。」
「同じスペイン語圏でも、中南米に派遣されたら大変！ 危険で！」
なんていう話を廊下でしていました。
そこをパティがちょうど通って、「そうなのよ～～」と言って話に花が咲きました。
パティは、いかに自分の周りの人がエクアドルで危ない目にあったかと、次々と話を始めました。
道を歩いていて、突然後ろから来た人に、ピアスをもぎ取られて、耳が血だらけになった話。
妹、弟が道でナイフを突きつけられて強盗にあった話。
友人の子供が誘拐にあって、身代金が払えなかったので、子供ではなく、お父さんが殺されてしまったという、ぞっとするような話もしてくれました。
「私の国では、人の命の価値は低いのよ。」
パティが顔をしかめて言いました。
パティのお父さんは小学校の先生。
貧困層というわけではありません。
でもパティは、自分と子供たちのより良い未来の為に、スペインへやってきました。
今は朝の6時から、お昼の3時まで、遅い時は６時まで、お掃除の仕事をしています。
彼女は、子供達により良い人生を築いて欲しいと思って、一生懸命です。
その甲斐があって、子供３人を立派に育て、一番上の娘は、国立大学の建築学部へ行っています。
スペインでは花形で、最も入学が難関な学部の一つです。
子供の話をする時のパティは、顔が輝いて、とても嬉しそうです。
立派に、スペインに来た目的を果たして、得意顔です。
南米人は怠け者、という悪評がありますが、そんなの嘘ばっかり！
（もちろん怠け者も、いるだろうけど。）
信じられないくらいのバイタリティーというか、パイオニア精神というか、何ひとつ困らない環境で育った私達が、忘れてしまった底力を持っています。
エバもそうでした。
コミュニケーションスキルのスクールへ通っていた時の、クラスメートです。
そのスクールの授業料は、なんと無料！
しかも優秀な先生がそろった、いいスクールです。
無料のからくりは、EU基金からの援助金で成り立っているからです。
一連の書類を提出して、１日も休まず出席する事が条件です。
どんな理由であっても、１日でも休むと、ブラックリストに載って、しばらくの期間は二度と無料のコースは受けられなくなります。
話はエバに戻します。
金髪色白で身長１４０ｃｍの小柄なエバは23歳。
4歳の子供がいました。
パティと同じで、より良い未来を築きたいと、コロンビアからやってきました。
毎日朝４時に起きて、朝食と昼食を作ってから、仕事に行きます。
朝４時って…
スペインの日の出は、冬で８時半です。
日の出の４時間半前…
日本で日の出の４時間半前といったら冬で、２時半頃でしょうか？
夏は、１２時半？？？
それって朝？？
仕事が終わってから、即効家に帰って、４時頃昼食を食べます。
（それって昼食？？）
そして、子供をお風呂に入れた後、スクールへ来ていました。
スクールは夜７時から１０時まで。
月曜日から金曜日。
毎朝４時に起きるエバにとってはかなりハードです。
「今から大学に行こうとは思わないけど、やっぱり、色々な事を学んで、成長していきたい。 今の自分に留まりたくないの。だからこのスクールに来たんだ。」
と言っていました。
スクールに来る時は、一銭もお金を持ってきません。
定期と、ノートとボールペン１本を持って来るだけです。
お金が余っていないのは、誰でも気づきます。
でもこうやって、無料のスクールを見つけて、今現在、自分にできる方法で学び続け、成長し続けています。
エバは、自分の南アメリカ流のスペイン語に、コンプレックスを持っていて、
「靖子は外国人だからね。 リラックスして一緒にいられるよ。 靖子の前ではスペインのスペイン語話さなくっちゃ、って思わなくていいから。他のスペイン人のクラスメートと話すときは、きちんとしゃべらなくっちゃ、て思って緊張して疲れちゃう。」と言っていました。
そんな風に、人なつっこく近づいてきた、頑張り屋の彼女とは、すぐに意気投合して仲良くなりました。
そして、すごく頭が良かった！！！
たまに、彼女と組んでワークをやることがありましたが、すごく優秀！
いつも、「わ～～、すごい！」と感心させられました。
もし、その知性を磨く時間とお金があったら、どんなに凄いプロフェッショナルになっていたかと思ってしまいます。
パティといえ、エバといえ、逆境に負けずに、なんとか今より良い人生を築こうと、頑張っている人たちと接すると心を動かされます。
子供により良い人生を、と思って厳しい環境の自分の国を後にし、スペインに移住して、子供の為に、朝早くから夜遅くまで働くパティ。
より良い人生を築きたいと思って、移住してきたエバ。
母として、妻として、充実した時間を送り、自分の成長にもエネルギーを注ぐ。
私達なんて、身の危険を感じる環境にいるわけでもなく、日々の生活に困っている訳でもない、ぬくぬくとした環境のなかで生活しているのに、いったい何やってるんでしょう！
私達には、実にたくさんの選択の自由が与えられてるのに、それをうまく生かさずに、自分自身で制約してしまっています。
もったいないなさすぎる！！
世界を見回してみると、好きな事をして生きるのは、贅沢だということがよくわかります。
でも、私たちには、その贅沢を簡単に手に入れる事ができるんですよ！
私達、すごく有利な環境にいるんです。
これを有効活用しない手はないと思うのです。
そう思いませんか？
ゴンサレス靖子
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